学科 | 産業関係学科 | ゼミ教員名 | 樋口 純平 | 年度 | 2020年度 |
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タイトル | 日本料理店の人事管理と料理人のキャリア -「祇園ささ木」「菊乃井」インタビュー調査- |
内容 | 現代の日本の食における「多様化」と「外部化」という変化は、伝統的な日本食文化を危機的状況へと追い込みつつある。「和食」という日本の伝統的な食文化の維持継承の担い手として、私が期待するのは料理店とそれを構成する料理人である。日本料理に関する知識・技術の伝承は、日本の伝統的な食文化の維持継承と換言できるだろう。知識や技術の伝承とは、すなわち、料理人を指導し育てることであり、その伝承の場が料理店である。そこで、筆者は料理人の育成や評価がどのように行われるのか、料理店での人事管理制度について関心を持った。筆者は、料理店でのアルバイト経験を生かし、日本を代表する京都の料理店「祇園ささ木」及び「菊乃井」へのインタビューを通して、料理店での人事管理に関する調査を行った。一般的な日本料理店の組織構造や料理人のキャリアから、「祇園さゝ木」を具体例列に、人事管理制度に関する調査結果を詳細に記述した。そして、インタビューによって浮かび上がってきた日本食文化の継継承の担い手としての料理店や料理人の姿を考察する。 |
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講評 | 卒業論文の作成にあたっては,自分が関心を持ったテーマについて,自分なりに研究してよかった,多少は苦しいながらも書き進める中に楽しさや充実感があった,と感じてほしいと思う。自分自身に向けて書く,という気持ちが大切と思う。 とはいえ,単なる自己満足に終わってもよくない。設定したテーマについて,先行研究は何を語っているか,現状はどうなっているのか,を知る必要がある。すると通常は,よく調べるほど自分に語るべきことがあまり残されていないことに気づく。そもそも,卒業論文でオリジナリティのある事実発見や考察を行うことは,たいへんむずかしい。それでも,よく選んだ文献と格闘することで自分なりの解釈を展開することはできるし,先行研究の隙間を見つけて自ら実態調査に取り組むことも可能である。 本年度の樋口ゼミ生の卒業論文は,どうであったか。多様なテーマの中にも,いくつかのパターンが見受けられたように思う。1つは女性活躍や長時間労働の問題等,例年見られる比較的オーソドックスなテーマを対象としたものである。選択されることの多いテーマとは言え,研究のプロセスで議論を重ねながら各自の問題意識と分析視角に応じた学びと納得の様子を確認することができた。また,別のパターンとして,3回生の学生研究報告会で取り組んだグループ研究のテーマ(「南アフリカの人事・労使関係」)を卒業論文として発展させたものもある。ダイバーシティの問題を軸として,日本企業への示唆を含めた分析と考察を展開している。海外の文献資料も含め,既に先行研究の検討と議論を重ねたテーマを各自でさらに深めたことによる苦労と達成感があったのではないか。さらに,医療従事者の労働問題や料理人の人材育成など,独自性の高いテーマに挑戦した者もいる。これらのテーマは指導教員の見識が限られている分,他のテーマ以上に自らの文献研究やインタビュー調査の努力が要求されることとなった。そこに各自の持ち味がよく表れたように思う。 以上のような本年度の卒業論文は,構想から準備,執筆に至るプロセスに例年よりも総じて遅れが生じた印象がある。今年は1学年あたりの人数が多かったことに加えて新型コロナウィルスの発生もあり,スケジュール管理や進捗管理が少なからず影響を受けた。こうした状況についての対応力向上は,来年度以降に向けた教員自身の課題としたい。 |
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キーワード1 | 人事管理 |
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キーワード2 | 食文化 |
キーワード3 | 日本料理 |
キーワード4 | 料理人 |
キーワード5 |