学科 | 産業関係学科 | ゼミ教員名 | 樋口 純平 | 年度 | 2021年度 |
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タイトル | 精神疾患・精神的障害における雇用の現状と課題 ―国際比較を通して― |
内容 | 本論文では近年増加するメンタルヘルス疾患について、職場でのメンタルヘルスケアの取り組みと障害者雇用という二つの面から国際比較を通じてその現状と課題を分析した。日本の職場でのメンタルヘルス対応については外発的に進められてきた側面があり、米国との比較からケア体制における専門家の立場の確立が治療のハードル引き下げや行動療法の実施、復職率の上昇に寄与するのではないかと考えた。しかし米国にもコストと福祉の対立がないわけではなく、メンタルヘルスケアへのアクセスや質などに課題が残されている。 障害者雇用についてはメンタルヘルスケアとの間にその課題点の共通性などが見られ、一般就労への統合が国際的に目指される中、保障政策のモデル三分類に属するそれぞれの国との比較から、一般就労への統合と保障のバランスに試行錯誤する各国の現状が読み取れる。一般就労の選択の幅を広げることや一般就労と福祉的就労の垣根を下げていくことも大切だが、一般就労をゴールにすることの危うさや就労に関しての企業と労働者間の認識のずれが就労定着の壁となることを踏まえると、福祉的就労や保障の充足、当事者間の問題解決の場も重要だと考えられる。 |
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講評 | メンタルヘルスから障害者雇用の問題までを,自分なりの一貫したパースペクティブで分析することを目指した。国際比較を含めたその視野の広さにも関わらず,分析では堅実さを保持しえている。結論では,考察の末にテーマの問題解決の難しさを直視しており,それだけに,残された可能性を慎重に探る姿勢が印象深い。 【全体への講評】 卒業論文の作成にあたっては,自分が関心を持ったテーマについて,自分なりに研究してよかった,多少は苦しいながらも書き進める中に楽しさや充実感があった,と感じてほしいと思う。自分自身に向けて書く,という気持ちが大切と思う。 とはいえ,単なる自己満足に終わってもよくない。設定したテーマについて,先行研究は何を語っているか,現状はどうなっているのか,を知る必要がある。すると通常は,よく調べるほど自分に語るべきことがあまり残されていないことに気づく。そもそも,卒業論文でオリジナリティのある事実発見や考察を行うことは,たいへんむずかしい。それでも,よく選んだ文献と格闘することで自分なりの解釈を展開することはできるし,先行研究の隙間を見つけて自ら実態調査に取り組むことも可能である。 卒業論文に真剣に取り組めば,書き進めるほどに執筆の目的が他者の評価よりも自分自身の納得に変わってくるように思う。「ここまで多くのことを書くつもりではなかった。」「ここまで内容にこだわるつもりではなかった。」ゼミ生が卒論執筆後にもらすこのような感想を,今年も聞くことができたことを嬉しく思う。 |
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キーワード1 | 外発的 |
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キーワード2 | メンタルヘルスケア |
キーワード3 | 専門家 |
キーワード4 | 一般就労 |
キーワード5 | 福祉的就労 |