卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名上田 眞士 年度2023年度
タイトル人事評価の不透明さと公平性 ―人事評価の“モヤモヤ”に関する調査―
内容  本論文では、2021年に株式会社識学で行われた、「人事評価の“モヤモヤ”に関する調査」を分析し、人事評価に対する不満が、評価の基準が不明確であるという「不透明さ」、評価する人によって評価が違うという「公平性」に起因していることが明らかになった。満足度も過半数は超えているが高い値ではなく、被評価者から評価者に対する採点でも10点満点で「5.6点」であった。基準に対する不明確さ、構造的な問題として、評価の現場で、プロセスも評価してほしい部下と部下の要求を断って嫌われたくない上司が互いに主観の混ざった評価を求めるという大きな課題も見えてきた。
 先行研究をから、人事評価の信頼性を高めるためには、何よりも評価制度自体を確立し、評価基準や評価方法、その反映方法を全従業員に公開し適切に運用していくこと大切であると考えられる。
最も、主張したいのはこの問題の根深さである。日本の働き方に合う、合わない、個々人によって合う、合わないが顕著に出るため、そう簡単に解決するものではない。裁判にまで発展するケースもあり、会社、従業員互いのコミュニケーションが何よりも重要であろう。
講評 皆さんの卒論のテーマを分野別に大きく括ってみると,「WLBと柔軟な働き方」「障害者雇用など様々な雇用問題」「人事評価の公平性やHR管理の重要性,社内教育,DXによる組織沿革」「日本的雇用の危うさや新卒一括採用の問題点」「戦争体験と経営者」等々となっています。たしかに個々の論文を取り上げてみると,その内容に精粗や優劣もあったように思います。けれども,基本的にはゼミ生皆が真面目に取り組んでくれた。そのように考えています。そこで,以下では皆さんが苦労した研究論文の執筆というものをめぐって,わたしが大事だと考える要点を簡単に指摘して,それを全体に向けた卒論作業を締め括る講評としたいと思います。
 まず,自らの選定したテーマに沿って,関連する先行文献をしっかり読んで欲しい。この点を第一に指摘をしておきたいと思います。研究主題に沿って,より多くの関連文献を渉猟している論文ほど,出来映えが良いと思われました。それによって,曖昧模糊としていた問題意識も鮮明化することになるし,課題の掘り下げも深まるからだと思います。具体的な現実を取り上げ,論じるに当たって「素手」で対象に取り組んではいけない。方法的な準備として,認識の枠組みをしっかり作って取り組むことが重要だと思います。昔,私が先生から教わったことを繰り返せば,高い建物を建てるためには,広い土台が必要になる。そのように考えて貰いたいと思います。
 また第二に現実の雇用社会の問題を論じる際には,マルクスの昔の有名な言葉をもじって言えば,肯定的な理解とともに否定的な理解も合わせ持って欲しい。要するに,批判的な研究であって欲しいということです。雇用社会の現実は,それが成立した「秩序」である以上,自らの存在の根拠をもっています。しかし,その現実をただ肯定するだけではつまらない。それがはらんだ無理や矛盾にも目を向けて欲しい。そういう要望です。やはり現実理解には,そのような複眼的な視点が必要だと思います。
 とはいえ,先人の言葉にもあるように「言うは易く,行うは難し」。評価の基準というよりも,現実理解に際した心がけだ思って下さい。
キーワード1 人事評価
キーワード2 不透明さ
キーワード3 公平性
キーワード4 コミュニケーション
キーワード5