卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名上田 眞士 年度2023年度
タイトルJR福知山線脱線事故から考える安全運行のための教育方法
内容  JR福知山線脱線事故の要因 の一つ に、 J R 西日本で行われていた 日勤教育という懲罰的な教育が、運転士の 運転への注意をそらさせたということが挙げられている。 その日勤教育では、厳しい言葉を用いた叱責や、清掃など といった運転技術の向上の効果に疑問を抱かれるような内容のものがあったという 証言があ り、 過去には 日勤教育によって自殺した社員もいた 。 事故が起きる前に日勤教育を改善できなかったのは、経営層が日勤教育の問題点を認識できておらず、 現業社員が 抱いた問題を管理者層から経営層へフィードバックする、下意上達ができていないという企業体質のためである。
 JR 西日本の経営層は事故後、 教育の改善 に努め 、部下に信頼される管理者の育成と、 実効性のある教育の充実化 を目指した 。 競合他社では、 管理者層と現業社員との信頼関係を 大切 している例や、経営層が現場を巡回して現業社員と交流する機会を設けるなど の取り組みを行っている 例があった 。過去に重大事故を起こした J AL は、三現主義という考え方を重視している。
 一方で、人間はミスをする生き物であり、自動運転へ切り替えることで安全運行をする という選択肢もある。
講評 皆さんの卒論のテーマを分野別に大きく括ってみると,「WLBと柔軟な働き方」「障害者雇用など様々な雇用問題」「人事評価の公平性やHR管理の重要性,社内教育,DXによる組織沿革」「日本的雇用の危うさや新卒一括採用の問題点」「戦争体験と経営者」等々となっています。たしかに個々の論文を取り上げてみると,その内容に精粗や優劣もあったように思います。けれども,基本的にはゼミ生皆が真面目に取り組んでくれた。そのように考えています。そこで,以下では皆さんが苦労した研究論文の執筆というものをめぐって,わたしが大事だと考える要点を簡単に指摘して,それを全体に向けた卒論作業を締め括る講評としたいと思います。
 まず,自らの選定したテーマに沿って,関連する先行文献をしっかり読んで欲しい。この点を第一に指摘をしておきたいと思います。研究主題に沿って,より多くの関連文献を渉猟している論文ほど,出来映えが良いと思われました。それによって,曖昧模糊としていた問題意識も鮮明化することになるし,課題の掘り下げも深まるからだと思います。具体的な現実を取り上げ,論じるに当たって「素手」で対象に取り組んではいけない。方法的な準備として,認識の枠組みをしっかり作って取り組むことが重要だと思います。昔,私が先生から教わったことを繰り返せば,高い建物を建てるためには,広い土台が必要になる。そのように考えて貰いたいと思います。
 また第二に現実の雇用社会の問題を論じる際には,マルクスの昔の有名な言葉をもじって言えば,肯定的な理解とともに否定的な理解も合わせ持って欲しい。要するに,批判的な研究であって欲しいということです。雇用社会の現実は,それが成立した「秩序」である以上,自らの存在の根拠をもっています。しかし,その現実をただ肯定するだけではつまらない。それがはらんだ無理や矛盾にも目を向けて欲しい。そういう要望です。やはり現実理解には,そのような複眼的な視点が必要だと思います。
 とはいえ,先人の言葉にもあるように「言うは易く,行うは難し」。評価の基準というよりも,現実理解に際した心がけだ思って下さい。
キーワード1 日勤教育
キーワード2 安全教育
キーワード3 懲罰的教育
キーワード4 自動運転
キーワード5