卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名寺井 基博 年度2023年度
タイトルトラックドライバーの労働環境改善のために -「2024年問題」による変化と課題-
内容 本論文では、直近に迫った物流の「2024年問題」が業界やトラックドライバーに与える影響、ならびに長時間労働の抑制だけでは解決されないドライバーの低賃金の問題について論じる。そこで、まず2章から3章ではトラック運送業やドライバーの現状を踏まえた上で、「2024年問題」により、時間外労働が制限されることで業界やドライバーに与える影響を取り上げる。次に、4章ではトラックドライバーの長時間労働を誘発する低賃金の原因を歴史や業界構造の面から明らかにする。そして、5章では賃金を上げるための運賃の適正化に向けて行政が実際に行なっている施策等を取り上げる。ここから、「2024年問題」によってトラックドライバーの労働環境が劇的に改善されるわけではないということがわかった。以上より、トラックドライバーの労働環境を改善するためには単に労働時間を抑制するだけでは不十分であり、長時間労働を引き起こす低賃金の問題解決とトラック運送事業者が適正な運賃を収受できる環境づくりが重要であることが明らかになった。
講評 本論文は、物流の2024年問題が流通業界やトラックドライバーに与える影響についてインタビュー調査を実施して、ドライバーの雇用環境を明らかにしようとした実証的研究である。時間外労働の上限規制という法制度の改正が、流通業界にどのような影響を与え、それによってドライバーの雇用環境にどのような変化が生じるのかをインタビュー調査によって明らかにした。業界への参入規制緩和による事業者数の増加と長期の経済低迷によって顧客獲得競争が厳しくなり、ドライバーは長時間労働によって賃金を確保せざるを得なくなったことが明らかにされた。結論として、労働時間の抑制よりもトラック運送業者が適正な運賃を収受できる環境づくりが重要であるとしている。本論文は、外部環境変化?トラックドライバーの雇用への影響を考察して、雇用環境を改善するための本質的な課題を明らかにした優れた論文である。
キーワード1 2024年問題
キーワード2 トラックドライバー
キーワード3 長時間労働
キーワード4 低賃金
キーワード5 運賃の最適化