卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名寺井 基博 年度2023年度
タイトル地方公務員の労務環境とメンタルヘルス
内容  本稿では、地方公務員のメンタルヘルス不調等による長期休務者が年々増加しているという問題に焦点を当て、地方公務員の過酷な労務環境の実態について論じている。具体的には、まず第2章でメンタルヘルス不調等による休務者数の現状をデータで確認し、第3章ではなぜ多くの地方公務員がメンタルヘルス不調に陥ってしまうのかについて「対人的要因」と「業務上要因」に分けて先行研究を行った。そして、第4章では実際に地方公務員として現場で働いている方にヒアリング調査を行い、そこで得たリアルな声と第3章までの先行研究を踏まえ、第5章で考察を行った。その結果、ストレス要因となり得る対人関係や業務量に日本のメンバーシップ型雇用というシステム自体が影響を及ぼし、職員に必要以上の負担をかける仕組みとなってしまっていることが明らかとなった。そして、実際の職場には業務量の増大で他者に気を配るほどの余裕はなく、1人ひとりが計り知れないほどの重圧や責任感を抱えながら働いていることが分かった。生きていくために働かなければならないが、働くことが生き続ける辛さになってしまうことがないよう、メンタルヘルス対策に取り組むべきである。
講評 本論文は、地方公務員の多くがメンタル不調により長期休務となっている現状について、インタビュー調査によってその要因を明らかにしようとする実証的研究である。先行研究から「対人的要因」と「業務上要因」の2点に分けてメンタル不調の要因を考察して、①職員数の減少と業務の複雑化・膨大化、?昇任に対する魅力と意欲の低下・モチベーションの低下が要因であるとする仮説を立てた上でインタビュー調査を実施し、その結果に基づいて仮説を検証している。その結果、業務過多により職場のコミュニケーションが減少して各職員が孤立することになり、業務量が予め定められていないことから、業務量の増大に限りなく対応しなければならないことが要因であることが明らかにされた。本論文は、先行研究の丹念な読み込みによる仮説設定とインタビュー調査の実施・分析により検証が行われた点が優れている。とりわけ、「地方公務員の公務環境を明らかにしたい」という筆者の並々ならぬ熱意が読み手に伝わる力作である。
キーワード1 地方公務員
キーワード2 労働環境
キーワード3 メンタルヘルス
キーワード4 メンバーシップ型雇用
キーワード5