学科 | 教育文化学科 | ゼミ教員名 | 越水 雄二 | 年度 | 2008年度 |
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タイトル | カストラートの隆盛と黄昏 |
内容 | 17世紀から18世紀後半のヨーロッパ音楽界では、カストラート(castrato)と称される、声変前の男児を去勢することにより生み出された歌手が活躍した。本論文では、「何故カストラートは隆盛を極め、その後衰退したのか」という問題を、ローマ教皇の政策やヨーロッパの習俗および思想から検証している。 カストラートは17世紀以降、ローマ教皇の音楽政策の下、教皇領内で積極的に用いられ、次第にヨーロッパ中に普及した。この隆盛の背景には、ローマ教皇の音楽政策だけでなく、当時のヨーロッパにおける「異装嗜好」や、カストラートを取り巻く「性」の問題、イタリア半島における貧困があると考えられる。 18世紀後半、カストラートの足元は揺らぎ始め、19世紀前半、彼らはまずオペラの舞台から消えた。その後、カストラートはシスティーナ礼拝堂における活動のみに追いやられ、20世紀初期、世界から完全に消滅した。この衰退には、ヨーロッパにおける啓蒙思想の広まりが大いに関連していると考えられる。 本論文を作成し、カストラートは「去勢された身体」を「時代の流れ」すなわち習俗と思想の変遷に翻弄された存在であることが明らかになった。 |
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講評 | このゼミでは、西洋の教育文化にかかわる研究テーマを一人ひとりが自分の興味関心に基づいて定め、およそ一年間―中には構想段階から一年半近く―、卒業論文に取り組んできました。2万字の卒論を執筆したのが12名、1万字の卒論を執筆したのが4名です。提出された各論文は、先行研究を超える独創的な成果に至ったものは残念ながらありませんが、著者の努力と工夫の跡が窺える点ではユニークな学習と考察の成果と評価できます。 ゼミ生を指導したというよりも、私は皆さんの卒論作成に併走しながら、さまざまな問題について学び、考える機会をもたせてもらいました。中には、おそらく一生、自分自身からは決して着目しなかっただろうと思うテーマもあり、それらを扱う卒論に出会えたことをありがたく感じています。また、自分も知っている、あるいは考えた経験をもつテーマについても、他者の視点からの調査と検討を媒介にして改めて理解を深められ、うれしく思います。こうした感謝や喜びの気持ちは、ゼミ生同士でも共有されているでしょう。 |
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キーワード1 | カストラート |
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キーワード2 | 音楽とジェンダー |
キーワード3 | 啓蒙思想 |
キーワード4 | |
キーワード5 |