内容 |
同性愛者は,異性愛者に比べると少数派という理由から,歴史的に差別の対象であり,抑圧される立場となっていた。しかし1993年にWHO(世界保健機関)が出した『国際疾病分類』第10版で同性愛の分類が削除されて以降,欧州では同性愛者でも結婚と同じような権利を得ることができる制度を設ける国や,同性婚自体を認める国が出てきた。日本においても,1990年代には同性愛者の団体が起こした「府中青年の家裁判」等,同性愛者の人権問題に関していくつかの出来事が起きている。本論文は,この「府中青年の家裁判」に注目し,その前後である1990年から2004年までの日本の同性愛者に対する認識の変化を,『朝日新聞』と『読売新聞』の記事を追うことにより検証したものである。1990年から2004年までの15年間を,1990年ごろの裁判前,1991年から1996年までの裁判中,1997年から2004年までの裁判後に分け,それぞれの期間の新聞記事の特徴を調べた。た。まだ同性愛者に対する肯定的で正しい認識が広まっているとは言えない日本ではあるが,「府中青年の家裁判」を契機に同性愛者の活動が活発になり,同性愛者に対する認識も少しずつ変化していることがわかった。 |